オープンハウス ドキュメント(2024)

基礎知識

本テーマ(脳活動)に関する基礎知識

脳活動計測

脳活動を計測するには、侵襲(Invasive)手法と非侵襲(Non-invasive)手法がある。侵襲な手法では外科手術などで頭蓋を開き、神経活動の近くの電気信号や血流変化などを計測する。神経細胞に近い場所から計測できるため精度が良いが、実験動物(サル・ラット等)や患者さんにしか使えない。一方、非侵襲手法ではそのような手術で脳を傷つけることなく脳活動を計測するため、健常者を含むどのような人でも計測できるが、精度が悪くノイズ(アーチファクト)が大きいという問題がある。

非侵襲脳活動

非侵襲脳活動では以下のものがよく用いられている。EEG(1)とMEG(2)は電気信号を計測しており、fNIRS(3)とfMRI(4)は神経活動に伴う脳血流変化を計測している。研究室ではEEGとfNIRSを所有している。

  1. 脳波 (Electroencephalogram: EEG)
  2. 脳磁図(Magnetoencephalogram: MEG)
  3. 機能的近赤外分光計測 (Functional near-infrared spectroscopy: fNIRS)
  4. 機能的磁気共鳴画像法(Functional magnetic resonance imaging: fMRI)

脳波(EEG)

脳波は一般的な非侵襲脳活動計測手法である。神経活動(後シナプス電位)が加算されて脳表から電位差として検出されると考えられている。計測が簡単で時間分解能に優れる点が特徴である。

脳リズム

脳波では以下のような特定の周波数が強く現れる(脳リズム)。

事象関連電位

ある特定のイベント(事象)に同期して生じる脳活動(電位)を事象関連電位(Event-related potential: ERP)と呼ぶ。試行加算平均により観測できることが多い。ERPには以下のようなものがある。


例: P300

脳波の問題点

一般的には以下のような問題点がある。

電極の配置

頭の大きさは人により異なるため、EEGやfNIRSを用いるときは以下のような標準的な電極配置を用いる。

前処理 (まえしょり、pre-processing)

計測された信号には課題と関連のない成分(アーチファクトなど)も混入している。そのため、計測された信号(生データ, raw data)に処理を行い情報を抽出しやすくする。これを前処理と呼ぶ。前処理は計測手法により異なるが、一般的に以下のようなものがある。

加算平均・トポグラフィ


例: 加算平均波形とトポグラフィ

BCIと分類

BCI

BCI(Brain-Computer interface)とは脳とコンピュータをつなぐインターフェースである。計測した脳活動から運動や知覚に関する情報を抽出し、それをコンピュータや機械(ロボット)に送ることでそれらを制御する。主にALS(筋萎縮性側索硬化症: Amyotrophic lateral sclerosis)や四肢麻痺(tetrapleiga)などの身体が不自由な方のコミュニケーション方法として研究されている。また、それ以外にも健常者を含む人々の行動や生活を支援したり、ゲームやエンターテイメントとなることも期待される。


例: マウスカーソルの操作 (上:BCI、下:通常)


例: BCIの概要

BCIの一般的な解析

BCIの一般的(古典的)な解析ステップは以下となっている。

機械学習

機械学習(Machine Learning)とはデータに基づきパターン、特徴、ルールなどを学習を行い、判別・分類・予測を行うことである。

回帰(Regression)と分類(Classification)

連続値を持つデータを予測するものを回帰と呼ぶ。一方、データが2つ以上のクラスに所属していて、そのクラスを予測することを分類と呼ぶ(判別・識別も同様の意味で使われる)。

手法


例: SVMのマージン最大化 (イメージ)